趣意書

趣意書

かつて、我々仲間の間で「子どもたちが変わった」という話がよくかわされていました。しかし、最近その頃とは全く異なる状況に入り込んでしまったようです。子どもの臨床家自体が変化してきているのです。いたるところで「発達障害」という診断名が飛び交い、結局はそういう観点でしか子どもの症状や問題行動をとらえることができない臨床家があまりにも増えているのです。DSMなどの診断基準がもたらした、何事に対しても「一般化する」弊害がそういう事態を引き起こしているのかもしれませんが、我々はこれからの子どもの精神科(心理)臨床に対して強い危惧の念を抱かざるを得ません。なぜなら、一般化は個別性を失った表面的な、十把ひとからげ的な見方をもたらします。定型的な行動観察は子どもを客観視することだけに重きを置き、個体のもつ内面性を忘れさせてしまいがちです。それらは本来の子どもの精神科(心理)臨床であるべき、子ども一人ひとりの内面の苦しさを慮り、解決の糸口を探るという営みからほど遠いものにさせてしまうからです。

臨床の場で接する子どもやその家族に対する理解はあくまでも個別的なものでなくてはなりません。そしてその治療も、最終的には患者や治療者にとって個人的体験になるのでしょう。であるからこそ、そういう個別的、個人的なものをより治療的なものに高めるという意味での研鑽は我々治療者にとって必須のものなのです。我々個人を支える理論や技術の枠組みも必要となります。

本研究会では、精神力動的視点を理論的基礎において、子どもやその家族の心に対する理解の仕方や治療について学び、個別的に臨床する精神科医や心理士を育てることを目標とします。

クリニック川畑 院長 川畑 友二

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